日本の空が色鮮やかな鯉のぼりによって占拠される5月5日、こちらアメリカではメキシコの祝祭「Cinco de Mayo(シンコ・デ・マヨ)」が盛大に祝われます。見ているだけでも楽しめる「piñata(ピニャータ)」を始めとして、メキシコ文化を余す所なく堪能できるこのお祭りは、休日ではないにもかかわらず毎年大変盛り上がりを見せる一大イベントなのです。
“Cinco de Mayo” is a Mexican holiday held on May 5th, though it’s celebrated on a large scale in the U.S. When I knew about “piñata” for the first time, I really got impressed by its uniqueness!
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現地メキシコよりもLAで盛り上がる!謎のお祭り「シンコ・デ・マヨ」
「Cinco de Mayo(シンコ・デ・マヨ)」はメキシコ文化を祝うお祭りでありながら、以前にご紹介したアイルランドに起源を置く祝祭「Saint Patrick’s Day(セントパトリックスデー)」とは異なり、本国メキシコではそれほど注目度がないどころか、祝祭の趣旨がアメリカとまるっきり異なる不思議なお祭りです。
この「シンコ・デ・マヨ」という呼び名は、私が最初にひらめいた「お新香にマヨネーズをかける」ではなく、メキシコの公用語スペイン語で「Fifth of May(5月5日)」を意味しています。
なぜ5月5日になったのかと言うと、かつてメキシコがフランスの植民地支配下にあった時代に、当時の政治家であった「Ignacio Zaragoza(イグナシオ・サラゴザ)」が率いるメキシコ軍がフランスの軍隊に勝利した日だからだそうです。
このフランスを敗走させた「the Battle of Puebla(プエブラの戦い)」以降ヨーロッパ勢力によって中南米各地が支配される事がなかった事からも歴史的に重大な立ち位置を占める出来事なのだそうですよ。
そんな起源を持っている事もあり、メキシコではこの戦いを記念する軍隊パレードなどが行われるくらいで、多くの国民を巻き込むような大規模なお祭りではないようです。ちなみに、一部のアメリカ人にはこの日がメキシコの独立記念日と勘違いされてしまっているようですよ(実際は9月16日だそうです)。
前日の5月4日はメイデーということもあって、ロサンゼルスダウンタウンではパレードの勢いが凄まじかったです。
そんな歴史的な祝祭がこうしたアメリカの一大イベントへ進化を遂げた経緯ですが、1940年代にカリフォルニア州で起こった「Chicano Movement(チカーノ運動)」と呼ばれるメキシコ系アメリカ人の公民権運動が一役買ったようです。
その後、1950-60年代にカリフォルニアから他州へと伝播したシンコ・デ・マヨですが、その時点ではそれほど知名度があったわけではありませんでした。この祝祭を瞬く間に流行の波に乗せたのが1980年代に事業展開していたビール会社など様々な企業だったそうで、商業化によってそれまで日の目を見なかったこのお祭りの急速な普及に貢献しました。
特にメキシコ系アメリカ人の人口が多い地域を中心に広まっていったそうです。そういった経緯を見ると、現在の祝祭のメインとなっているどんちゃん騒ぎの理由にも納得がいきますね。
なお、戦いの中心地となった「Puebla(プエブラ)」に由来しています。Puebla City(プエブラ・シティ)は1987年に世界遺産に登録されたほど、その街並みには植民地時代の影響を色濃く反映したバロックやルネサンスなど様式の美しい宗教的建造物が立ち並んでいます。私も機会があればぜひ一度訪れてみたいものです。
陽気な音楽に身を委ねよ!気分を高揚させるメキシコ文化
アメリカでは5月5日はメキシコ文化を目一杯に堪能します。陽気なメキシコの音楽や情熱的なダンスを楽しんだり、タコスやブリトー、ナチョスやガカモーレ(アボカドをベースにつくられるディップソース)など伝統的なメキシコ料理や、ビールなどのアルコール飲料を思う存分に堪能したりします。また人々の服装や室内装飾はメキシコの国旗で使われている緑と赤、白を取り入れて彩る傾向があるようです。
また各地ではメキシコの文化色豊かなイベントが催され、華やかな衣装に身を包んだ人々が広場で陽気な音楽と共にダンスや音楽を披露する姿が見られます。
ロサンゼルスにあるダウンタウンLAでは特に「Olvera Street(オルベラ・ストリート)」というメキシコの物産品などを取り扱う商店やレストランが立ち並ぶ観光地としても有名な通りがあるので、そちらでは毎年結構な賑わいを見せるそうですよ。
日本でも国際的なイベントの開催地として有名な代々木公園などでフェスティバルが行われているようです。
あたかもスイカ割り!破壊行為が醍醐味の珍ゲーム
そしてこの祝祭に絶対に欠かせないのが「piñata(ピニャータ)」です。ピニャータは紙や段ボール製の容器にキャンディや小さなおもちゃなどを詰めた後、外装を色鮮やかに装飾した状態で高所から吊るし、皆で木の棒を使って叩いては破壊するといった変わった慣習です。しかし子供も大人も参加できる為、なんとなく日本のスイカ割りを彷彿とさせる遊びで、遠くから眺めているだけでも楽しい気分を味わうことができます。
現在では宗教的な意味合いが失われてしまった為、使用される容器には実に様々な形を見る事ができます。最近ではスパイダーマンなど漫画のキャラクターなども登場しているようですが、登録商標の関係でいろいろ問題になっているようです。この容器は個人で自由に創作する事もできますが、面倒臭がりの方はアメリカでは大手の総合スーパー「TARGET」などでも購入できます。
そして肝心のルールですが、まずキャンディなどを詰めた容器を高い所から吊るした後、一人ずつ順番に目隠しをした子どもたちが木の棒などで叩きます。
簡単に当たらないようにピターニャ自体を大人が動かしてしまう事もあるようですが、基本的には周囲の助けを借りてその位置を把握しながら叩くようです。本当にスイカ割りのようですね。
一人一人に割り当てられた殴打数と時間は決まっているそうで、一種のゲームのような感覚で行われるみたいです。子供たちは容器が壊れて中からキャンディなどが落ちてきたら拾う事ができます。見ているだけでも興奮しそうなくらい本当に楽しそうなのです。
片付けと準備が少し大変そうではありますが、今年は鯉のぼりだけでなく一緒にピターニャを飾って叩いてみても楽しいかもしれませんよ。また今までメキシコ料理を口にした事がないという方もぜひこの機会に味わってみてはいかがでしょうか。
この破壊ゲーム、5/5だけではなくて誕生日にもよくやるそうですよ。