2017/04/30

[ハリウッド役者あるある]母国語じゃ無い者同士のオーディションで起こること

Actor's life(役者修行の話)
目次

    先日久方ぶりにオーディションに呼ばれ、多くのキャスティングスタジオが犇めき合うハリウッドまではるばる足を運んでまいりました。今回は初めて訪れる会場での驚きの体験と共に、オーディション会場における様子や私たち役者が心掛けねばならない事、そして日本ではなかなか起こりえないことですが、オーディションする側とされる側が母国語じゃ無い英語にてよく起こることを書き綴ります。

    It is always tough to have an audition with a second language. However, it is fun at the same time. Yeah, if the filmmaker also speaks English as a second language, it’d be more interesting.

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    久々のハリウッド、トイレなしスタバには注意!

     

    今回の会場は、以前の記事でご紹介した近年アカデミー賞授賞式の会場にもなっており、観光名所としても有名なドルビーシアターのすぐ側に位置するRed Line(地下鉄)のハリウッドハイランド駅より、徒歩で30分ほどの場所にありました。駅からバスで向かう事もできたのですが、ここの最近の運動不足で体が鈍っていたので、ここは心を鬼にして炎天下の中を徒歩で向かいました。

     

    公共機関があまり充実していないアメリカでは車がもはや必需品なのですが、私の場合恥ずかしながらまだ運転免許を取っていないので、移動には本数の少ないバスと電車がメインに利用しています。

     

    ただ所要時間は車の何倍もかかりますし、しばしば大幅に遅延するどころか、まるで来ない事もあるなど信用性に著しく欠けますので、役者はオーディションも撮影も時間通りに会場や現場に到着する為にも、やはり車は必要だなと痛切に感じます。まあ車も交通渋滞にはまってしまうと動けなくなってしまいますけどね。

     

    なお、ハリウッド通りより南下するにつれて、人通りも少なくなりますので、遅い時間帯にこのあたりを出歩くような事は極力避けたほうが身のためです。日本のような治安の良さに慣れ親しんでいると、油断して周囲への警戒力が欠損してしまいがちですので、くれぐれもご注意ください。観光地として有名ですが、ハリウッドはどちらかというと治安が悪いのでいつでも注意は怠れません。

     

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    会場付近に小規模ながらショッピングモールがありましたので、その中のスタバでランチを食べてから向かう事にしました。スタバは私にとって正念場を目前として息を整えるのに最適のスポットなのです。

     

    しかし残念ながら、こちらの店舗にはトイレが設置されていなかった為、コーヒーは控えてベーグルだけを注文しました。ハリウッド周辺には実にたくさんのスタバがありませんが、トイレがない店舗ばかりですのでご利用の際はドリンクを注文するときはある程度後先の事を考える必要があるかもしれません。

     

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    オーディションは突如訪問する!役者に必要な来客対応

     

    今回の会場となった「CAZT Studios」というキャスティングスタジオは、間に「The Actors Company」という俳優の為のレッスンやDemo Reel(オーディションや事務所に応募する際に用いる自分が芝居をしているシーンをまとめた映像)の作成サービス、劇場のレンタルなどを行っている会社を挟んで二棟にまたがる建物にありました。私の会場は今回手前でなく奥の方でしたので、細長い駐車場を超えて突き進みます。

     

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    ちなみに今回が初めてというわけではないのですが、なんと一度に二つの案件(別個のプロジェクトでそれぞれ一役ずつ)のオーディションに挑んでまいりました。たまに一つのプロダクションが撮影時期の異なる複数のプロジェクトを同時期に募集するケースがあり、そういう場合はそれら全てまとめてオーディションを行うため、稀に双方のプロジェクトに応募していてお呼びがかかると、同じ会場かつ同じ日時(少しずらす事もありますが)で二つのオーディションを受ける事があります。

     

    案件数が多い分、役を得られるチャンスは大いに増すわけですが、逆にその準備にかかる作業量が2倍になるので正直言って大変です。ハリウッドだけでなく日本でもよくある話ですが、いずれのプロジェクトもオーディションの連絡をもらったのが前日の朝、さらにその脚本を送ってもらったのがその夜だった為、何と言っても時間が足りずあたふたしました。

     

    日本でもハリウッドでも、役者はいつオーディションの話が降って来るかわかりませんので、いざという時に即座に対応できるように常日頃身軽でいられる環境を整えておかなければいけません。

     

    ララランドをご覧になった方はお分かりかと思いますが、ララランドで役者を目指している主人公のミアがカフェでバイトをしている最中に突然オーディションの連絡が来て、すぐさまバイト先を後にしていましたが、まさにあのような感じをご想像いただければと思います。副業をしないと生活していけませんが、それに縛られると役を獲得するチャンスは大いに減るわけです。

     

    「サインイン」問われるデジタル化への対応力

     

    キャスティングスタジオで開催されるオーディションの場合、たいてい受付は常設のパソコンやタブレットから専用のシステムを介して行われます。学生のプロジェクトで各学校の教室などで行われる際は、部屋の前に置かれたバインダーに手書きのリストが書かれた紙が挟まっており、そこに名前や連絡先などを記入するだけ済みますが(ない場合もあります)、パソコンとなると現代っ子ながら少し緊張します。

     

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    今回はオーディションの通知と併せて手順説明がなされていましたし、この手法は三度目の経験でしたのでスムーズにサインイン(受付)できました。しかし、初めての際は壁に張り付けられていた説明書きをじっくりと読み、専用のパソコンを凝視しては怪訝な顏で作業していたので、周囲の目には完全に素人に映っていた事でしょう。

     

    サインインを済ませると入力した情報が瞬時にオーディションルーム内のスタッフさんに届き、自分が会場に到着した事が伝わります。あとは順番が回ってきて名前が呼ばれるまで静かに待機します。

     

    ちなみに幾つもの部屋で様々なプロジェクトのオーディションが同時に行われている為、サインインの入力画面では該当のプロジェクトを選択するのですが、これを間違えると少し恥ずかしい思いをします。
    一度年配の方が誤って別のプロジェクトを選んでしまったようで、そのプロジェクトのスタッフにここじゃないですよと言われている場面を目撃しました。新たに入力し直すにもだいぶ手間取っている様子でしたので、高齢の方にとってはこのシステムは厄介なのかもしれませんね。

     

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    巨大なソファや長椅子が置かれた待機場所には、私が挑んだ二つ以外のプロジェクトのオーディションを受ける方々を含め、合計15人前後の男女が自分の順番を静かに待っていらっしゃました。今回は人種を問わない役柄でしたので、アジア人は私だけでした。こうして多くのアメリカ人や他人種に囲まれると、私の脚はなんて短いのだろうと厳しい現実を突き付けられます。そんな中、心を奮い立たせて私も長椅子の端っこへ座りました。

     

    緊張を見せる方はそれほど多くなく、皆さん口パクでオーディションで行われるシーンのセリフや流れを確認していたり、スマホをいじっていたりトイレに行かれたり(私も念のため行きました)と、特に役者同士で言葉を交わす事もなく自分一人の空間を創出して集中力を高められていました。おそらく初めての空間にキョロキョロして、おのぼりさんのごとく振る舞っていたのは私だけだったように思います。私も他の方の時間の過ごし方を見習わなくてはなりません。

     

    発音だけじゃない!多くのハンデをもたらす言葉の壁

     

    脚本全体に目を通し話の全容を把握した後、Sides(サイズ;脚本のオーディションで実際に演じるシーン部分を切り出したもの)を手に練習するのですが、あまり時間に余裕がない中その一連の流れが二倍でしたので相当焦りました。

     

    それと言うのもオーディションはSidesを片手に逐一セリフを確認しながら演じても一向に構わないのですが、私はそれをしながら万全に演技できるほどまだ英語が堪能ではないので、オーディション中にSidesから目が離せなくなる事態を避けるべく、いつも該当のシーンを丸暗記していきます。

     

    特にハリウッドでは英語が母国語じゃ無い人のプロジェクトもたくさんあるので、その際あちらも完璧な英語を話すわけでは無いし、普段の何倍も集中力が必要になります。
    ただ、お互い、第二言語でやり取りする難しさを知っているので、より共感したり楽しい瞬間でもあるのが、ここハリウッドでのオーディションの醍醐味の一つだと感じております。

     

    これはどの場合でもそうですが、相手のセリフも把握しておかないと痛い目に遭います。オーディションではたいてい相手役の台詞を呼んでくれるのですが、スタッフ側の方は役者さんとは違って小声だったり滑舌が良くなかったりするので、聞き取りに集中してしまうと一つ一つの台詞に対するリアクションが自然とできなくなってしまうからです。

     

    さらに日本語であれば割と瞬時に暗記できる分量でも、英語となるとそう簡単にはいきません。聞き慣れない単語や言い回しはまず発音や意味から調べないとならない時もあります。
    また緊張して頭が真っ白になってしまった時に備え、Sidesをプリントアウトして持参していくようにもしています。たいていは会場に印刷されたSidesが用意されてはいるのですが、いつもあるとは限らないので信用しすぎず自分でも用意していくのがベストです。

     

    今回は残念ながらそうした余裕がない状況でしたので、案の定少しうろ覚えの部分がありオーディションの最中に記憶を辿りながらセリフを言わなければならない場面がありました。特に素に戻る事もなく最後まで演じ切れはしたのですが、若干テンポが崩れてしまったのが非常に心残りでした。

     

    さらに今回は二つ同時でしたので一つだけに集中する事ができず、いわゆるマルチタスカー(複数の作業を同時進行できる人)でない私は平静を装いながらも精神的に少し慌てふためいた部分があり、演技が少し固くなってしまったように思います。

     

    本気を出し切って落選するよりも、自分の本領を完全に発揮しきれないまま会場を立ち去らなければならないときが最も悔やまれます。ですので、そうした後悔を避けるべく毎回のオーディションは念入りな準備が必要なのです。

     

    私も既にビデオオーディション(実際に会場へ行って演技をするのでなく、自宅などで指定されたシーンなどを演じている様子を撮影して先方に送る)を含めて、合計30回弱ものオーディションを経験したので流石にもうそれほど緊張はしませんが、まだまだ様々な未体験の状況に出くわす場面が絶えませんので、これからも数をこなしていき、また次回はぜひとも手抜かりのないよう万全の態勢で臨みたいと思います。

     

    いずれにせよ、初体験のキャスティングスタジオで貴重な体験ができて本当に良かったです。監督のお二方にはオーディションに呼んでいただいて本当に感謝です。ありがとうございました!

     


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