元女優が初のハリウッドスタジオ女性トップになるためにやったこと

先日、女性で初めてハリウッドの大手映画スタジオでトップを務めた「Sherry Lansing(シェリー・ランシング)」氏を招いてのQ&Aセッションが、全米最大級の規模を誇る名門の映画学校「NEW YORK FILM ACADEMY」のLAキャンパスにて開催されましたので、この貴重な機会を逃すまいとちゃっかり拝聴してまいりました。
今回はそんなハリウッド映画の全盛期を牽引した偉大な女性のお話しから映画業界を生きる上での姿勢を学ぶと共に、ハリウッド映画製作の裏側を垣間見させていただきました。

I went to listen to Q & A session with Sherry Lansing, who was the previous CEO of Paramount Pictures. I learned a lot from her attitude and various episodes.

 

映画の街だから実現できた『リーディングレディ』Q&Aセッション

 

今回のイベントですが、何度かご紹介させていただいているニューヨークフィルムアカデミーのロサンゼルス校にて催されました。ハリウッドの隣のバーバンクに校舎を構え、周りはワーナーブラザーズやディズニーなどの映画スタジオに囲まれている最高の環境です。

 

 

ゲストがアメリカでは大変な知名度のシェリーさんだというにもかかわらず、会場となった上映室は頑張っても100人くらいしか収容できないのではないかというくらい小さな劇場だったので、席を確保するのにちょっとした熾烈な競争が巻き起こっていました。

 

当日もキャンセル待ちをする人々で長蛇の列が出来ており、会場は正に熱狂と興奮の渦に包まれてすごいことに。

 

 

今回は席の指定はなく、First-Come-First-Serve(早い者勝ち)でしたので、ちゃんと自分の席を確保出来るか一瞬不安が過りましたが、無事に開始前に席に着けたので良かったです。

 

もう少しキャパの大きい場所を用意してくれても良かったのではないかなとも思いましたが、これほどハリウッドで名の知れた一流の方と近距離でお話しを拝聴できる機会はそれほどないので、結果的には大変な臨場感を味わう事ができて非常に満足しました。

 

こちらハンズオン(実地指導)で有名な学校ですので、もしかしたらイベントのコンセプトとして疎外感を抱かせない適度な距離を意図的に画策したのかもしれません。こちらの学校の評判が大変良いのもこうした細かな配慮が基盤にあるのでしょう。

 

なお、今回のセッションには今春に出版された彼女のバイオグラフィー(伝記)“Leading Lady: Sherry Lansing and the Making of a Hollywood Groundbreaker “の執筆を担当された「Stephen Galloway」氏も参加されていて、実に豪華な顔ぶれでした。

 

 

数々の名作誕生の立役者「Sherry Lansing」とは

 

今回お話を伺ったシェリー・ランシング氏は1980年にわずか35歳という若さで20世紀フォックスの社長に就任し、その後1992年には100年以上も長きに渡って数々の名作を生み出してきたパラマウント・ピクチャーズでCEOを務められたという何とも輝かしいキャリアを歩まれた女性です。

 

現在は映画業界から引退されていますが、在職期間中であった1990年代には、フォレストガンプ(1994)やブレイブハート(1995)、そしてタイタニック(1997)など後世に残る傑作を次々と世へ送り出した、ハリウッド黄金期の立役者の一人でもありました。

 

現在は映画業界を引退してしまわれましたが、このような講演会への参加やまたご自身のお母さまの命を奪ったがんの研究に貢献する慈善事業をされるなど女性活動家としても大活躍されています。

 

女優から突如転身、成功への軌跡「Script Reader」

 

そんな当時では異例の女性CEOという地位にまでにまで上り詰めた彼女ですが、最初に映画業界へ足を踏み入れたのはなんと女優としてでした。

 

しかし順調に映画出演を果たしながらも一向に自身の演技に満足のいかなかった彼女は、次第に映画製作の裏側の世界に興味を持ち始め、ついに「Script Reader(脚本を読む仕事)」へキャリアを転向します。そして、その後新たな職での功績が実を結び、初の女性CEOの誕生へとつながったわけです。

 

現在では男女における雇用機会の平等が当たり前の概念になりつつありますが、それとは打って変わって当時は女性がトップに君臨するなど考えられなかった時代でした。それにもかかわらず、そんな中で彼女は堂々と偉業を達成したわけです。

 

改めて考えてみますと、言葉では表現しきれないほどにとてつもない方だなと思い知らされます。

 

『脚本は予算を考慮して現実的に書けそうなもの書くべきですか?』

 

今回はシェリーさんへのQ&Aということで、特に脚本に関するものが多かったのです。

私が中でも印象に残った質問は『脚本を書く際に撮影で要する費用を考慮して内容を構築すべきか』という問いに対して、シェリー氏は自分が描きたいものを優先すべきとアドバイスされていました。

 

映画化のファイナンスに関しては、脚本を購入するという決定を下したスタジオ側が、責任持って行うだろうし、とにかくライターは自分の心から気にいる作品を書き上げてほしいというスクリーンの表側も裏側も経験されている氏の激励も兼ねた回答でした。

 

司会進行を担当されていた方がおっしゃっていたのですが、彼女は誰にでも分け隔てなく敬意を持って接していらっしゃるそうで、もともと人間が好きだという性質に加え、卓越した才能はどこから来るかわからないので、それ見落とさないように常に視界を広げているそうです。

 

まさかの予算オーバー!「タイタニック」の裏側

 

彼女がCEOとして関与した映画の中で最も絶望的な財政問題を抱えたのは、今や世界中で名作と謳われている「タイタニック」だったそうです。

 

タイタニックに先立って、既に「ターミネーター」などの大ヒット作を打ち出していたJames Cameron(ジェームズ・キャメロン)監督との長期的なつながりを考慮した当時の20世紀フォックスの代表が、多額の費用を要するグリーンスクリーンでの撮影を承諾はしたものの、準備段階における予算計画の甘さや様々な予期せぬトラブルから製作費用は撮影開始と共に膨れ上がっていき、その時代には異例の約200億円という膨大な金額にまで跳ね上がってしまったそうです。

 

そんな途方もない状況下でもシェリー氏がタイタニック製作への巨額の出資を決断したのは、この作品自体に感銘を受けたからでした。彼女は作品を見極める際に脚本の内容と何よりご自身の直感を重きを置かれているそうです。

 

余計な固定概念に左右されず自分自身の力を信じて来られた方だからこそ、ここまで上り詰める事ができたのかもしれません。

 

また大手の映画スタジオを取り仕切るトップとして、常に莫大な金銭が関わる大きな決断を迫られる責任が重大な立場にありながら、恐怖心を上回って彼女を支配していたのは良いものを製作したいという彼女の底知れない渇望だったそうです。

 

自身が求めるものに対してひた向きに努力を積み重ねてきた姿勢にはとても感銘を受けます。ちなみに最も楽しさを感じていた瞬間は脚本家の方と作品を読んでは、まだ見ぬ登場人物に想いを馳せたりその世界観を思い描いたりしていた時だったとお話しされていました。
脚本をお読みになるのが本当にお好きだったようです。

 

まずは懸命に取り組み、あとは天命を待つのみ

 

今回のお話しの中で大変印象に残ったのは、彼女を成功へ導いたのはHard Work(懸命な取り組み)とLuck(運)だったと語られていた場面です。この業界に生きる人間であれば努力というものは必要不可欠で誰でも行なっているもので、彼女も他の人と同じようにただただハードワークをこなしていただけでした。

しかし、ただ他の人と違う結果をもたらした最後の要因は「運」だったと言います。

 

彼女が到達した高みは言わば誰にでも辿り着ける可能性はあったわけで、彼女が特別に何かを実施したわけではなく、ただ幸運に恵まれて、このような結果に帰着したのだとおっしゃられていました。

 

可能性は誰しもが握っているというお言葉に励まされると共に、最低限でも転機への足掛かりとなる土俵には上れるよう努力しなければならないなと身を引き締めさせられたので、私も今後とも粘り強く頑張っていこうと思います。

まずは運が降り落ちてくる場所に自分が立つこと。それこそが今回の最大のメッセージでした。

 

ちなみに余談になりますが、シェリー氏がお話の中でかの高名なスティーブン・スピルバーグ監督について言及された際、隣にいらっしゃたステファン氏が監督がかつて役者にはセリフを覚えて時間通りに姿を現してくれさえすれば良いと語っていたとおっしゃられていたのが、とても面白かったです。

 

キャストが撮影10分前にドタキャン!その驚愕の破壊力へどう対応する

 

前回の記事で取り上げましたように、やはり役者は時間厳守が大事なんだなと改めて思い知らされました。また利益をより多く捻出したいマーケティングの担当者とより良いものを世間に提供したい製作側との間で考え方に大きなギャップが生じたエピソードもあって、非常に興味深い内容でした。

 

シェリー氏のお話しのされ方や佇まいなど、終始年齢を全く感じさせない若さにような活力にあふれていらっしゃる方でお話しを窺っているだけでとても心が軽やかになるような気分になりました。
正に真っ直ぐ前へと進んで来られたシェリー氏自身の生き様がそこにそのまま表れているようでした。

 

 

その圧倒的な地位を驕り高ぶる事なく、全ての人に同じ目線で語り掛ける姿は本当に偉大だなと感じました。その姿勢こそが人だけでなく、運をも惹きつけたのかもしれません。

 

今回シェリー氏から学んだ多くの事柄を胸にこれからも精進してまいろうと思います。ニューヨークフィルムアカデミーさん、貴重な機会を与えていただき、本当にありがとうございました。

 

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