Film vs Digital / 役者から見るデジタルとフィルムの映画撮影の違い

一口に短編映画に出演すると言っても、プロジェクトの内容によって場所や時間帯などといった撮影環境が変わるのはもちろんの事、携わるスタッフさんや用いられる機材なども実に多種多様を極めます。今回は役者には関係がないように見えて、実は演じる際に大いに影響を与える撮影カメラの違いについてご紹介いたします。

Short films are shot with various kinds of camera equipment. It’s crucial for actors to know what kind of cameras because it affects the filming process.

 

「人」で決まる、撮影現場の雰囲気

 
各プロジェクトの規模や種類によって、撮影に参加するスタッフの構成も大きく変わります。例えば私がしばしば参加させていただいている学生フィルムの場合、卒業製作(Thesis)などの比較的大きなプロジェクトであれば、時に外部でも活躍されている経験あるプロの方に依頼する監督さんもいらっしゃいますが、たいていは同じコースを受講する生徒同士で音響や照明などあらゆる役割を分担して撮影に臨まれます。

 

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The atmosphere during filming depends on what the crews are like. I can enjoy a unique mood created by the different members whenever I join a new project.

 
Filming crews usually consist of directors’ classmates in the case of student films. I always feel their youth and abundant energy, and I also get impressed by their innovative ideas.

 

その場を動かすメンバーが違えば、撮影時における雰囲気やモチベーションはたまた些末な問題の対処法にさえそれぞれ独特な個性が見られるので非常に面白いです。特に世代や経験の差によって浮かび上がる差異はそういった場面で顕著に表れます。

 

例えば20代前後の学生さんなどは経験の観点から見ればまだまだ未熟であるものの、機材や大道具を運んだり設置したりする際などに大変敏捷な動きを見せてくれる為、あらゆる場面でその漲る若さから元気を分け与えてもらえます。
また所々で何物にも縛られない発想力や大胆な行動力を駆使して、予期せぬ事態に屈する事もなく全力で対処されるので、私も見習わなくてはならないなと感じさせられる場面が多々あります。

 

役者までも振り回すフィルムカメラ

 
特に操作を求められる事のない役者にとっては撮影機材の種類などお門違いだと感じてしまう方も多いかもしれまませんが、こうした正直言って私たちにはあまり馴染みがないように思われる機材も、時に撮影の過程に甚大な影響を及ぼす事があります。

 
もちろんメーカーやブランドの違いだけではたいした差異は生まれません。重要となるのはデジタルかフィルムかという点で、これによって撮影全体の流れが大いに変わってしまうのです。

 

別の記事にてご紹介しましたUCLAの学生さんによるプロジェクトが、私にとって初めてとなるフィルム撮影体験だったのですが、いつも見慣れたデジタルカメラとは異なる風貌に興奮しながらも、これまで経験した事にない撮影方法に終始緊張と戸惑いを隠せませんでした。
こちらがその際にお世話になった16mmフィルムのカメラになります。

 

フィルムのカメラです

 

This 16mm film camera was being used when I participated in the UCLA student project, which I mentioned in another article.

 

とにかく世話が焼ける、それがフィルム

 
デジタルカメラですと撮影した映像の精度をその場で確認できますし不要であれば即座に消去できる為、効率的に取捨選択ができて非常に便利です。
一方でフィルムは一度映像を焼き付けてしまうと人智を越えた力でも使わない限り、元通りのまっさらな状態に戻す事はできません。言わばノートにサインペンで書き込むようなものですから、失敗すればその分だけフィルムを余計に消費してしまうのです。

 

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So much pressure on the shooting with actual film. We need to overcome a lot of pressure and concentrate on the first take.

 

そして何より最大の欠点はこのフィルムの価格でしょう。たかだか数分間撮影するだけでも数百ドルにも及ぶ膨大な費用を要してしまうそうです。つまりスタッフもしくは役者の誰かが本番中に何らかのミスを犯せば、時間だけでなく多額のお金を浪費してしまうわけです。流石に失敗した分だけその人が実費負担という事態はあり得ませんが、間違えた分だけ罪悪感に苛まれる事は間違いないでしょう。

 
そのように容赦なく撮影に従事する全員の神経をすり減らしに掛かるカメラですから、無駄をできるだけ削減すべく撮影は大変慎重に行われます。まず幾度かのリハーサルで入念に懸念事項を確認して、その後ようやくカメラを回します。

 

テイクの回数を重ねる間もフィルムは休む事なく消耗され、またそれと同時に製作費はうなぎ上りとなります。ただでさえ通常より張り詰めた緊張感の走る空間で、NGが出る度にちらつく監督さんが苦悶の表情が場の空気をさらに強張らせなどしたら、もはや役者の感じる重圧はとてつもありません。
そんな中でも強大なプレッシャーに打ち勝ち、一本勝負の本番に集中力を研ぎ澄ませてミスない最高の仕上がりを追求しなくてはならないのです。

 

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I saw them replacing a film a couple of times during the film shoot. It took so long and looked very tiring. If I had to try it, I’d be so frustrated.

 

また撮影中にフィルムが端まで到達してしまったら、その都度フィルムを交換をしなくてはなりません。今回その交換作業の場面を幾度か拝見したのですが、黒い遮光布らしきものを頭から被ったまま真っ暗闇の中で20分ほどカメラと格闘されており、監督さんの手によって黒布の内部へ次々と大量のガムテープ片が吸収されていく光景は今でも脳裏に焼き付いています。

 
外部からの光を完全に遮断して作業しなくてはならないなんて、だいぶ骨が折れるだろうなと思いました。
このロードに時間がかかるので、撮影が良い流れで進んでいた時に少し間が空いてしまうのもフィルム撮影とデジタル撮影の違いですね。

 

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Hmmm….

 

そうして様々な困難を乗り越えて無事に撮影が終了した後も、悪夢はまだ続きます。なんとフィルムの現象にも相当な費用がかかるそうです。
映像の焼き付いたフィルムをデータの状態に変換さえしてしまえば、その後はデジタルカメラと同じ要領で編集や取り扱いが可能だそうですが、それに至るまでの道のりがとにかく長く険しいのがこのカメラの悪しき特性です。フィルムという餌を散々貪り食っては、最後まで手のかかるなんて本当に困ったものですね。

 

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Transcoding!

 

こちらはなかなか普段お目にかかれない、貴重なフィルム現像の様子です。
ここで撮影したフィルムの映像をデジタルのデータに変換します。

 

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It also costs a lot to transcode film to digital date. A lot of difficulties accompanying film cameras bother directors.

 

再現不可能な究極の美しさがそこにある

 
そんな非常に不経済なフィルムカメラですが、そうしたいくつもの悪条件をも凌駕する唯一の利点があります。それはフィルムが持つ映像の質の高さです。

 
一度フィルムで撮影したものをご覧いただけばお気づきになるかと思うのですが、フィルムが映し出す何とも言えぬ独特な質感は、編集ソフトの加工機能(デジタルカメラで撮った映像をフィルムで撮影したかのように見せるフィルター機能)だけでは到底再現する事のできない奥深さがあります。

 

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この部屋でカラーグレーディング(映像のトーンや色調をいじります)

 

Some directors choose film cameras in spite of many demerits because the movies shot with film cameras have the profound beauty which nothing can replace.

As an actress, I also prefer as beautiful movies as possible. I’m really looking forward to seeing the film that I joined!

 

以前フィルムで撮影された映像データを拝見した事があるのですが、本当に美しい仕上がりでした。現在では技術の革新的な進歩により、デジタルカメラであっても5Kや8Kなどの(テレビの広告などでよく耳にする解像度の単位です)従来と比較すると圧倒的な高解像度で撮影ができるようになってはきましたが、それでもいまだフィルムが独自に持つ究極の美しさに魅了される監督さんが少なくないようです。

 

出演する側としましても、せっかく一つの作品として残るのならば映像が鮮明な方が嬉しいですし、そもそもフィルムでの撮影はなかなか巡り会う機会がないので、先日撮影した映像の仕上がりを拝める日が楽しみでなりません。心地の良いプレッシャーを味わうことができて非常に良い経験になりました。完成が本当に待ち遠しいものです。

 

 

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